Curtis Mayfield
Curtis Mayfieldは1942年 6月 3日、Chicagoで生まれています。
さすがに生まれた土地が土地だけに、黒人音楽の様々なフェイズを吸収して成長したことでしょう。
特にゴスペルとソウルにおいて彼の資質に大いに寄与していたようで、なんと 10才になる前に彼にとっての最初のグループ The Alfatonesを結成し、そのリーダーとなっていた、と言いますからスゴい!
1956年に彼の家族は Chicagoのノース・サイドに居を移していますが、そこで彼は Jerry Butlerと出会い友人となるのですが、Butlerは自身のグループ、Arthur & Richard Brooks、Sam Goodenからなる The Roostersに Curtis Mayfieldを誘いました。そしてクィンテットとなったこのグループは後に The Impressionsと名を変えています。
彼らの初ヒットは1958年の「For your precious love 」でした。1961年には Curtis Mayfieldは住まいを New Yorkに変えていますが、この年の「Gypsywoman 」は、ここ何年か続いていた、メンバーとレコード会社の間の悪感情のしこりを修復した、とされています。Curtisはもはやグループのリード・シンガーとしてそのユニークな声を活かして「I'm so proud 」、「Keep on Pushing 」、「People get ready 」、「We're a winner 」、「Mighty, mighty 」などの一連のナンバーを送り出したのでした。

その Curtis Mayfieldが The Impressionsから離脱したのが 1970年のことで、同年、Buddahからソロとしての初アルバム Curtisをリリース、そこから「Move on up 」が唯一イギリスでのヒットとなっています。
続いて The Impressions時代のナンバーも含む New Yorkの Bitter Endでのライヴを収録した Curtis Live!を 1971年にリリース。同年 Rootsもリリース。1972年には 10万枚を超える大ヒットとなった、あの Superflyのサウンド・トラックで彼の名は一躍知られるようになったのでした。実に 4部門のグラミーを授賞し、それが契機となって Gladys Knight & The Pips、Aretha Franklin、そして The Staple Singersのプロデュースまでも手がけるようになります。
ここで Superflyがヒットしたことによって、彼は「商業的ポテンシャル」を優先させた作品ではなく、彼自身のもっと深いところに沈潜していた社会的なインタレストを中心としたコンセプチュアルなアルバムの製作に取りかかることができたのではないでしょうか。
そうして翌1973年に完成したのが、この 5枚目のアルバム、Back To The Worldなのです。そのタイトル曲でもある「Back To The World 」はヴェトナムに派兵された黒人兵士の戦場での「地獄」と、そこから無事に復員してきた祖国での「新たな」地獄を歌ったもので、いわゆるドロップ・アウトした白人ヒッピーたちの心情的な「反戦ムード」なんぞとは次元の異なる「現実」として、マイノリティにのしかかる重圧として描かれています。ヴェトナム戦については、非常にアメリカ寄りな、北ヴェトナム戦士を冷酷な殺人鬼のように描いた、マイケル・チミノの『ディア・ハンター』という(ムダに長い、なんて言われてましたが)映画がありました。ここでも特徴的だったのは、主人公である、やはりアメリカ社会の中ではカンゼンにマイノリティに属するロシア系移民たちが、マイノリティゆえに「国策」に迎合するしかない、という姿で、これは第二次世界大戦中のアメリカ陸軍の日系二世による第 442部隊にも同様なことが言えるのではないでしょうか。

Back To The World 」は、その終り近く McDonnel F-4 Phantom(と言われていますが・・・)の音で幕を閉じます。そして続くのは、これもまた黒人達の生活を見据えた「Future Shock 」、その余韻の中で始まる、Right On For The Darkness ・・・
Darknessに相対する単語は「 Light」であって、Light on for the darknessなら「暗がりを照らす明かりを点(とも)せ」となるのですが、彼はこれを「 Right」としてあります。本来、Right onでは「時代の先端を行く」あるいは「洗練された」という形容詞となり、for the darknessの前に来るべき動詞 or名詞とはならないので、やはりここは多少ムリはあっても「暗がりに」正義を!てなイミに考えるべきでしょう。
キーは F#mですが、実際にはギターのコード・ワークによる F#m7と Bm7の二つを基本に、背後には流麗ながらも「重さ」を持ったストリングスを配し、ボトムはスポンティーニアスなドラム・ワークとスライド・アップを多用するヘヴィーなベースが支えています。
一部、ベースのソロ的な部分もあって、終盤になだれ込むと世界の終末を思わせるような(はちとオーヴァーやけど)ストリングスによる旋律の重層が、ある種の虚無感を、あるいは希望の無い未来を暗示しているようで、この作品から 30年、我々はいったいなにをして来たのか?いまだに「暗黒」に光がさすことは無く、いやそればかりか、新たな「闇」を作り出してしまっているのではないのか?という疑問が「痛い」のでございます。
この曲にちりばめられたブラスによるリフが「天使の軍勢」を象徴するものだとしても、もはや現実の「闇」はキリスト教社会の外部にまで流出しており、「この」神の威光では照らすことすら出来ない「今日」を 30年前に予想していたとは思わないけど、Right on for the darknessに込められたメッセージ、いや、メッセージというよりは、むしろ「リポート」、そこに Curtis Mayfieldが見ていたもの、その重さをいまさらにかみしめています。

1960年代の終りころに Sly & The Family Stoneというプロジェクトがスタートし、ブラック・ミュージックに公民権や人種差別、黒人の意識向上などの概念を持ち込むことが「当たり前」となって、当時 The Impressionsのメンバーだったころの Curtis Mayfieldも、その潮流に気付いていたハズですが、「神の言葉を伝える(ゴスペルはいわば神の言葉を伝えるものでもありますから)」ことを離れ、別な言葉を語りたくなったとして The Impressionsから離脱するのが1970年。
すぐに自身のソロ・アルバム Curtis を Buddahからリリースしています。この Right On For The Darknessが収録された Back To The Worldはその前の Superfly( film soundtrack)にも増してラジカルに彼の目が社会に向けられた作品で、ブラック・パワーを(不本意ながら?)励起するような Sly & The Family Stoneとはまたちがった位相で「20世紀のアメリカで黒人であることの現実」を抽出している、と言ってよいのではないでしょうか?

なんちて、どーも、このあたりのハナシになるとシリアスっぽくなってイカンなあ。やはり時代のバイアスみたいなものがあるんでしょうか。
ちょうどこの時期から、いわゆるブリティッシュ・ロックに、ある種の空疎感を見るようになって行くのも、この Curtis Mayfieldや Sly & The Family Stoneの歌詞の世界に気付いてからだったような気がします(それに音の方でも Velvet Undergroundの洗礼を受けてからは、ただパワーだけのロックってえのに多少「アホらしさ」も感じ始めてたしね)。

そして、このアルバム中、唯一の救いかもしれない「I Were Only A Child Again 」などを挟んで夢のように美しい(でも、内容はクスリに溺れる愚かさへの警告だと思うんですけどね)「Keep On Trippin' 」でアルバムを終える(あ、オリジナルの場合ね。現在の CDじゃ曲順がちゃいます)。

Curtis Mayfieldはこの後も Buddahから Curtis In Chicago( 1973)、 Sweet Exorcist( 1974)、 Got To And A Way( 1974)、 Claudine( 1975)、さらに Curtomでも 8枚のアルバム、以後 RSO、Boardwalk、CRC、Ichiban、Essential、Windsong、Warnersなどからもアルバムを出していくのですが、ワタシにとっては、それはもうどうでもいいこと。ワタシにとっての Curtis Mayfieldは、 Back To The World!これに尽きます。

1990年、Brooklynでの野外コンサートに出演していた彼の上に照明のクラスターが落下!彼の脊柱を損傷し、それ以来、彼は四肢麻痺患者としてリハビリテーションを送ることとなり、1996年には新しいアルバム New World Orderをリリースしていますが、そこでの彼は歌だけで、あれほど評価の高かった彼のギターは、1999年12月26日の彼の死まで、ついに復活することはなかったのでした。



reserched by Othum: Blues After Dark


[PR]
by blues-data | 2005-09-05 02:54

[ BACK to BIO-INDEX ]