"Mr. Freddie" Spruell
「 Mr. Freddie's Kokomo Blues」この曲そのものは、Kokomo Arnoldが1934年に出して大ヒットになった「Old Original Kokomo Blues 」のカヴァーってことになります。その曲はやがて Robert Johnsonの「Sweet Home Chicago 」として結実して、さらにはブルース・イグロアをして、太った黒人女性がスゥイート・ホーム・シカゴを歌うのがブルース、というイメージにはウンザリ、みたいに言わせるほどに愛唱歌(?)化してゆくワケですねえ。
それを Mr. Freddieはとっても「キュート」に歌っています。一聴したところ、女性ヴォーカルにも聞こえるクセのある声で、意外と淡々と歌ってますよ。自分のギターの外に Carl Martin*のギターも加えた演奏は、なんとなく Stop & Goみたいなミョーな「区切り感(なんじゃそりゃあ?)」があって、オモシロいんですが、あまり「重厚さ」はおまへん。やはりどことなくワタシの好きな「おちゃらけ」の香りがかすかに感じられて(?)いいですねえ。

*CARL Martin 1906-1979、 Virginia州の Big Stone Gapで生まれる。1930年、Knoxvilleで吹き込み。その後シカゴに移り数ヶ所のレーベルに吹き込み。それからほぼ 30年間、活動を続ける。1935年の録音「Farewell To You Baby 」、「Badly Mistreated Man 」、「Joe Louis Blues 」が Yazoo 1016の『Guitar Wizards 1926-1935 』に収録されている。また1936年の録音(1936.7.27, at Chicago)、「Farewell To You Baby 」、「Badly Mistreated Man 」、「Crow Jane 」、「Old Time Blues 」は『ESSENTIAL RECORDINGS OF EAST COAST BLUES (1927-1941) 』で聴くことが出来る。


カンジンの "Mr. Freddie" Spruell(P-Vineの PCD-2254のライナーでは「フレディ・スプルール」と表記していますが、Wild Jimmy Spruillの「Spruill」じゃないんだから「スプルール」、あるいは「スプルル」じゃないか?って気がすんですけどねえ、日暮さん)についちゃあ、レコーディング・データ以外の資料が見つかりません。生年も不詳でございます。
でも、いちおー録音された「最初の」デルタ・ブルースマンの中のひとり、ってえことにはなってます(他は Bo Weavil Jacksonと Blind Blakeね)。
ご存知のように、1914年 7月28日にヴァルカン半島で火がつき、全世界に拡大した第一次世界大戦に、アメリカが参戦したのが1917年です。そしてその 2年後にヴェルサイユ条約が締結されて終ったのが1919年の 6月28日でした。
まさにその反動でもあるかのようにアメリカはThe Roaring 20's に突入していったのです。当然その上昇ムードはアメリカ黒人の生活にも無縁ではなく、1920年には(資料に残っている限り)史上初のブルース系の音楽として Mamie Smithの「Crazy Blues 」が録音されています。それから1924年までは女性のシンガー*ばかりが録音されています。

*1922年までに Edith Wilson、Lucille Hegamin & Her Blue Flame Syncopatorsなど、1923年には Ma Raineyや Bessie Smithがレコーディング・デビューし、Clara Smithに Rosa Henderson。さらに初のフィールド・レコーディングで Lucille Boganも録音されています。ただ、この年には Sylvester Weaverも録音してて、その中の「Guitar Rag 」はカントリー・ミュージックの Bob Wills & His Texas Playboysによって「Steel Guitar Rag 」としてカヴァーされたりもしてて、男性も録音されてるじゃねえか!なんて言われそうですが、この録音は「すべて」インストなんですわ。つまり女「声」のみ、というマーケットの状況は変わっていないのでございますよ。


1924年になると、Old Southern Jug Bandが初のジャグ・バンドとして録音され、さらに「初めて」男性のシンガー、Ed Andrews、Daddy Stovepipeそして Papa Charlie Jacksonが録音されています。そして、以前採り上げた Blind Lemon Jeffersonに続いて、1926年に、初のデルタ・ブルースマンとして "Mr. Freddie" Spruellも録音されたのでございました。
したがって、少なくとも、レコード盤上に表れた「ブルースの歴史」としてはこの1925年前後をその「始まり」と見るのが妥当なのかもしれません。この1926年 1月25日は「Milk Cow Blues」(serial 9793-A)を録音。同年の11月17日には 「 Muddy water blues 」と「 Way back down home (Milk cow blues)」を、1928年の 7月には有名な「 Tom cat blues」と「 Low-down Mississippi bottom man」を録音しています。この1928年の録音だけは前者が Historical ASC-17で、後者が Mamlish S-3802に収録されていますが、それも含む全曲が RST BD-2014に収録され、最後の一曲以外は Yazoo L-1038にも収録されています。
1935年 4月12日には「4A Highway」、「Don't cry baby」、「Your good man is gone」(ここまでの 3曲は RST BD-2014と Mamlish S-3802に収録)、「Let's go riding」(RST BD-2014、Roots RL 314と Origin OJL-18に収録)、そして今日のブルース、「Mr Freddie's Kokomo blues」(RST BD-2014と Mamlish S-3802に収録)が録音されています。
このように1928年から1935年までの空白の期間というのはもしかすると、1929年10年29日、「Black Tuesday」と呼ばれた株式市場の大暴落に始まった「世界恐慌」の影響もあったのかもしれません。1932年にはレース・レコードの大手だった Paramount Recordsが潰れ、レコード業界もその規模を縮小していってましたからね。
この低迷から業界が抜け出してくるのは1934年あたりだったのではないでしょうか。そして1935年には Jazz Gillum*や Washboard Sam**あたりが注目され、その流れの中で、"Mr. Freddie" Spruellもダウンホームな味わいからひとつ脱皮(?)してより広いマーケットを狙った音作りということでこの「 Mr. Freddie's Kokomo Blues」を仕上げているんじゃ?ってえ気がするんですが、いかがなもんでしょ?

*本名 William McKinley Gillum。1904.9.11-1966.3.29。Mississippi州 Indianola生まれ。1923年から街頭で演奏しシカゴに移って Big Bill Broonzyと組み1934年から活動。ハープ奏者
**本名 Robert Brown。1910.7.15-1966.11.13。Arkansas州 Walnut Ridge生まれ。


というワケで、Mr. Freddieについては、あまし良く判りませんでしたね。あ、ひとつだけ。彼は1956年 6月19日に Mississippi州で死亡しています。
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by blues-data | 2005-09-07 15:49

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